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ばか者のすべて

おれが夏に新潟へ行く理由はだいたい100個くらいあって。ひとつ目はもちろん夏の新潟競馬。夏のローカル競馬場で馬を見ること。ふたつ目は市のはずれにある証券の神様を祀る神社。持ち株の今後をお願いすること。みっつ目は日本酒と寿司。馬券を当てて高い寿…

「とりあえず生3つ」

乾杯の余韻が終わらないうちに、ナギさんが一杯目のビールを半分まで飲み干した。この人は昔からそう。あたしがカシオレとかカルーアミルクしか飲めないときからそうだった。「ハイ、報告。あたし今年で30」ツキ子が聞いてもいないのに年を言い出した。ツキ…

いつかオレンジ畑を見下ろす丘で

なぜおれはこんなところにいるのだろう。あの。帝国ホテルの17階である。おれが愛してやまない咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-Aで、おれが愛してやまない阿知賀女子学院のメンバーが泊まったホテルである。本来ならば11階とかそこらの客室で、高鴨穏乃と…

「沙羅って呼んでください」

そう自己紹介でブチ上げ、オフィスを変な空気にした派遣の女が会社に来なくなってから半年が経った。沙羅はやたらと暗い女で、重そうな黒髪が常にメガネにかかっており、邪魔じゃないかとの我々の心配を他所に、いつも喫煙所でタバコを吸いながらスマホを弄…

夏休み3/9〜4/9

8/10。月曜日。おれは埼玉県に生まれ、育った。女もまた内陸県で生まれ、育った。だから、なんとなく通じるところはある。女が「海が見たい」と言い出したのは梅雨が明けるか明けないかのころで、全品290円の貴族という名前からはほど遠い客層の居酒屋で、お…

安心な僕らは旅に出ようぜ

『魚と馬と女は誰でも人生で数回はとんでもない奴に出会う。そしてその中で一番の奴が逃げていくんだ』 あの年は珍しく紅葉がくすみ、ハズレの年だったと思う。11月の勤労感謝の日がうまい具合に土日と重なり三連休になると、おれは決まって京都へ行った。土…

「会ってほしい人がいるんだけど」

そう友人のサブカル女の口車に乗せられて、ホイホイ約束の場所へ行ってしまったことがそもそもの間違いだったのかもしれない。そこで宗教勧誘かツボを売りつけられる可能性をようやく考え、頭を抱えたおれの前に現れたのは普通の女だった。というか、カワイ…

競馬を見に行こうよ

と、めずらしく彼女が言ったので耳を疑った。父親が競馬をやる姿を見て育ったから、競馬が嫌いだと言っていた彼女から出てくる言葉とは思えなかったからだ。 「大きなレースがあるんでしょ? 見に行こうよ」 その日は東京競馬場でジャパンカップダートが施行…