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レトロスペクティブ京都

どっか行った
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   おれが東京の大学で日々を無為に消費していたころ、遠く離れた京都で古くからの友人が暮らしていた。それをいいことに、おれは長期の休みがくればその京都へ、ムーンライトながらだったり長距離バスで向かったりして、時間の許す限り洛中で10代後半と20代前半を過ごしていた。京都競馬場にもよく行ったし、八坂の場外馬券売り場にもよく行った。馬券の調子は悪くなかったように思う。目の前でのちの三冠馬が優勝したことがささやかな自慢だ。

   その友人の家には自転車が2台あったから、よく夜から、それも深夜だ、いろいろなところに出かけた。名のある都市、それも古都京都の街中を真夜中に疾走するのは快感だった。晩飯を食いに行くのももちろんだし、毎晩京都の銭湯へ行くのも恒例だった。思い立って丑三つ時に伏見稲荷まで行って、闇のなか常夜燈で妖しく光る千本鳥居を駆け抜けたりもした。それから毎日正午くらいまで寝て、京都まで来て観光もせずに日々を消費して、それでも永遠にこうやって遊んでいられるんじゃないかと思った。

   そんな日が終わったのは、おれが社会人1年目でエイシンアポロンフィフスペトルマイルチャンピオンシップを見に来たときだから4年前のことになる。おれはまだ社会人になったことを受け入れていなかったし、なにより友人はまだ大学生で、あと1年は京都にいることになっていたから、また来られる、あの日々が過ごせると思っていた。しかし、それが最後になってしまった。

    あれから4年経って、今はおれも彼も関東で暮らしている。今回久々に2人で京都に滞在する機会があった。相変わらず大したことはしていない。ただ、初めて京都で酒を飲んだ。そのあと、アニメ「有頂天家族」のシーンであったように、四条大橋の欄干によりかかって京都南座の上にある月を見上げたいと思い、まだ人でごった返す四条大橋へ行ったのだった。橋の欄干に寄りかかって、そういやここから五山の送り火見たよな、と言ったらここじゃねーよと言われ、相変わらず京都の地理は分からんなと思った。たった数週間の滞在でデカい顔をしているが、おれもただの観光客なんだよな、と飲み込まれそうなほど黒い鴨川を覗き込んで思った。おしまい。