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今週のレース:日本ダービー

競馬
ノーザンダンサーの血の一滴は 1カラットのダイヤモンドより価値があるという
それはノーザンダンサーなくして 今の競馬は考えられないからだ
だが そのノーザンダンサーの血も そこまで受け継いで来た馬なしでは
流れることはなかったはずだ
過去の何千何万もの馬たちの血と汗と涙なくして 今日の名血は有り得ない
そして、そんな名血を超えんとする馬たちが 明日の名血をまたつくる――――
 みどりのマキバオー 第16巻より
 
ついに今年もこの日がやってきた。日付が変わって、本日5月29日は競馬の祭典、第83回日本ダービー。おれを含めた競馬ファンにとって、一年のうちでもっとも尊く、幸せで、胸の高鳴る2分半。関係者ならば誰でもその栄光の夢を見る2分半だろう。馬にとっては生涯一度の2分半だ。すべてが眩しい輝きを放つ2分半の針が進みはじめるまで、あと少し。

おれが競馬を始めたころ、ディープインパクト皐月賞・ダービー・菊花賞を無敗で制し、英雄とまで呼ばれた。一方の牝馬クラシックは桜花賞ラインクラフトオークスシーザリオ、そしてクラシック競走ではないものの、牝馬三冠の最後に数えられる秋華賞エアメサイアが制し、3頭が3冠をそれぞれ分け合った。

今年はディープインパクトの息子はもちろんのこと、そのエアメサイアシーザリオの息子がそれぞれダービーに出てくる。先週のオークスを勝ったシンハライトも、母がそのシーザリオに子ども扱いされたシンハリーズであることも記憶に新しく、おれにとって今年のクラシックは例年以上に「血」を意識したクラシックになっている。

おれが2005年世代で好きだったのはラインクラフトだった。しかしラインクラフトは、2006年の第1回ヴィクトリアマイルで着外に敗れたのち、現役中ながら心不全で死んでしまった。エアメサイアも同じヴィクトリアマイルダンスインザムードに惜敗の2着を最後に引退、シーザリオオークスを勝ったのち、日本のレースに出ることなく引退してしまった。2005年は牡馬のこともあって、牝馬は印象が薄い世代かもしれない。けれど、この年から競馬を見はじめたおれにとっては、やはり思い出深い世代なのだ。


シーザリオ 優駿牝馬 オークス 2005

この年、ダービーと同じ東京芝2400mのオークスエアメサイアを抑えて勝ったのはシーザリオだった。これから10年半経った昨年の朝日杯でもシーザリオの息子・リオンディーズがエアメサイアの息子・エアスピネルを抑え優勝するなど、血とその歴史は確かに受け継がれている。

エアメサイアラインクラフトにこそローズS秋華賞で借りを返しているが、シーザリオには2戦2敗だった。シーザリオが回避した秋華賞こそ勝ったものの、聞こえてくる声は「シーザリオがいれば……」だ。しかし、本当にそれはそうだったのだろうか? おれはそうは思わない。

エアメサイアの血は朝日杯で母と同じくシーザリオの血に敗れてしまったが、お互い最大の目標は2歳のG1ではないだろう。それをきょう、ダービーという最高の舞台で決着をつけよう。エアメサイアは2014年に鬼籍に入ってしまったし、今年デビューのラストクロップだってダービーまでたどり着けるかは分からない。シーザリオの2014だって同じことだ。だから今年が、最初で最後のチャンスとなる可能性も決して低くはない。

奇しくも血は母のオークスと同じ馬番3枠5番に入った。母と同じく息子の手綱を取る武豊も、スペシャルウィークと、そして2005年の、おれが競馬と出会った年のダービーを同じ3枠5番から制している。さあ、11年越しのリベンジマッチ。天国からエアメサイアと、そしてラインクラフトも声援を送っていると信じたい。
 
日本ダービー:◎エアスピネル